2013年7月10日
日々の診療で気づくこと、
小児アレルギー疾患が増えています。
喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・じんま疹(即時型)・食物アレルギーなど・・・・
それに伴ってアレルギーに対する親御さんの関心が高まり、
特に昨年12月に東京都調布市で起きた、チーズなどの乳製品にアレルギーのある小学6年の女児が、給食後に死亡するというとても痛ましい事故以降、
クリニックにはアレルギー疾患に関する問い合わせ、
アナフィラキシーやエピペンに関する講演の依頼が増加しています。
先日も、某小学校30数名の先生方に、「アナフィラキシーとエピペンの使用法」について講演する機会を頂きました。
アレルギーとは・・・
そもそも人体には、侵入した異物や病原体(抗原)を排除して、抗体をつくる能力(免疫機能)があります。異物や病原体が再び体内に侵入したときに、無毒・無害化するためです。ところが人体に無害であったり、あるいは大切なものに対してまで過剰に免疫反応が起こり、種々の障害(痒み・くしゃみなど)を引き起こすことがあります。これをアレルギー反応というのです。
アナフィラキシーとは・・・
ある特定の原因物質によって2時間以内、通常は30分以内に全身に現れる激しいアレルギー反応の総称です。アナフィラキシーが急速に進行し、急激な血圧低下によって意識障害などを引き起こすような、死に至りうる危険な状態をアナフィラキシーショックと呼びます。
エピペンとは・・・
少しずつその名前が知られてきましたが、AEDなどと比べるとまだまだ一般的には浸透していません。エピペンには30kg以上の方用と、15~30kg未満の方用の2種類あり、エピネフリンという薬が入っています。エピネフリンには交感神経を刺激して血管を収縮させ、下がった血圧をすぐに上昇させ、同時に気管支を拡げて呼吸を楽にさせる作用があり、アナフィラキシーにとても有効な治療薬なのです。
先ほどの東京の事故で、検証委員会は担任の先生や養護教諭がショックを和らげるエピペンの注射を早期に行わなかったこと、日頃からアレルギー対策への現場の意識が低く、職員の方々の情報共有が十分でなかったこと、などが問題点に挙げられました。
クリニックでは最近、こんなことがありました。
ミルク・鶏卵・魚卵・ソバにアレルギーを持ち、アナフィラキシーの既往があるお子さんのことでお母さんからの相談でした。学校から「お子さんはお母さんが作ったお弁当を持参してもらうので、学校へのエピペンの携帯は必要ないでしょう」と言われたとのこと。
実際、例え弁当持参で給食を食べないとしても、必ずしも安全であるとは言えないのです。
うっかり友達の給食をもらってしまったとか、近くの席の子がミルクをこぼしてそれが飛び散ってきたとか、
そればかりか・・・朝に食べたもの、あるいは朝に飲んだ風邪薬に、たまたま鶏卵アレルギーのお子さんが飲んではいけないもの(ノイチーム・アクディーム・レフトーゼなど)が入っていたり、塗ってはいけないもの(皮膚科で火傷の際に出されるリフラップ軟膏など)が含まれていて、学校に着いた頃にアレルギー反応を起こしてしまったとか・・・
いろいろと想定されるわけです。
何かを食べた後、薬を飲んだ後、蜂に刺された後・・・などに、これまでアナフィラキシーが出たことのある方は、エピペンを積極的に持つべき(医療サイドは持たせるべき)でしょう。
自分も以前、とある仙台市の小学校にエピペンの管理や抗アレルギー剤の内服について協力をお願いしたところ、同意を得るのがなかなか容易ではなかった経験があります。
エピペンや抗アレルギー剤携帯の児童を受入れる学校間の、アレルギー疾患への取り組みに対する “温度差”を、いかにして無くしていくか、我々医療サイドからも積極的に働きかけていく時期にきていると考えています。